史資料の収集・検索の方法

 論文のテーマを絞り全体の構成を練る段階で、まず第一にやるべきことは、そのテーマに関しての先行研究をしっかりと押さえることです。今までの研究でどこまでが明らかになっているのかを把握することで、初めて自分の論文の問題設定が妥当なものであるかを判断できるのです。ここではまず日本語で書かれた著書・雑誌論文の場合を中心に、その分野の先行研究をどのようにしたら効率的に調べることができるのかを紹介します。

 

ステップ1

(1) 「史学雑誌 XXXX年の歴史学会-回顧と展望-」(史學會)

 自分のテーマが決まったら、まず毎年5月頃でる史学雑誌の「回顧と展望」特集号を過去5~10年間分ほど読んでみるのがいいでしょう。日本の学会での当該分野の研究動向が簡単に把握でき、また自分のテーマに近い論文を見つけることも可能でしょう。これ以外の例えば『歴史学研究』などの学術雑誌でも、研究動向論文や書評が掲載されているので、併せて見ることをお奨めします。

(2) 「XXX入門」「XXX研究案内」のような分野別の入門ガイド

 歴史の研究書には必ずその地域別・テーマ別の入門書があります。例えば、西洋史入門・中国史研究・アメリカ研究案内などです。出版年が古いものだとあまり使いものになりませんが、比較的最近のものであれば、これら入門ガイドを参考にするのが良いでしょう。これらの入門書は、歴史学資料室(総合校舎5階)にある場合が多いので探して見て下さい。

 

ステップ2 ~インターネットを使った検索~

(3) インターネットを使ったキーワード検索

 上記以外の方法としては、インターネット上のデータベースを使って検索する方法があります。文学部や総合図書館には学生が自由に利用できるコンピューターの端末が数多くありますので、是非これらを利用して関連図書や論文の検索をしてみて下さい。

(a) 書籍の検索

 自分の論文のテーマが決まったら、まず学術情報センターのNACSIS Webcat 総合目録データベースWWW検索サービスにアクセスし、そのフリーワードの項目欄に、テーマに沿ったキーワード(例えば、「フランス革命」「リンカーン」等)を入力し、検索開始ボタンをクリックして下さい。関連図書のリストがでてきます。リストにのっている書籍のタイトルをさらにクリックすれば、詳しい書誌情報と所蔵図書館の一覧が出てきますので、これを参考に本を入手して下さい。なお、学情のデータベースは、著者名やタイトル、出版年等でも絞り込んで検索できるので、いろいろと試してみて下さい。  上記のようにして書籍の所在を確かめて、図書館で貸し出すのが一般的な手順でしょう。次に覚えておいて良いのは、インターネットを通じて本を注文できる書店のデータベースを利用して、同じように著者名・タイトル・キーワードで検索する方法です。こうして文献リストを作ったり、あるいは、その書店に本を直接注文することもできます。和書の場合は、図書館で本を貸し出せるケースが多いと思いますが、洋書の場合、専門性の高い学術書となると国内ではなかなか見つからない場合もあり、海外の書店に注文する方が早く、しかも割安で資料を手に入れることができることが多いことを覚えておきましょう。定価(アメリカの場合は、新刊でも30%近い割引もよくある)に、送料が加算されても、日本国内の書店を通して購入するよりは、割安です。航空便では10日から2週間ぐらい、船便で約1~2ヶ月で入手できます。支払いはクレジット・カードです。以下に、代表的な書店を紹介しておきます。

  • Amazon.com アマゾン・コム書店という自称「世界一大きな書店」。100万タイトル以上の書籍データベースから検索が可能で、大幅にディスカウントされた新刊書籍を自分のショッピング・カートに入れ、気軽に注文ができる。在庫にない古書なども、スペシャル・オーダーすると、探して電子メールで値段を教えてくれる。
  • 紀伊国屋書店 和書と洋書の入手可能な書籍のデータベースを持ち、検索・注文することができる。

(b) 雑誌論文の検索・注文

 (1)や(2)によって、必要な雑誌論文が見つかった場合は、NACSIS Webcat WWW検索サービスにアクセスし、その雑誌名を入力して、雑誌のある大学図書館を探しだし、千葉大の図書館のレファレンス・コーナーで複写依頼の手続きをすることになります。  もう一つの方法は、直接インターネット上のデータベースを利用する検索するやり方です。まず日本語の雑誌論文を探す場合は、学術情報センターの「雑誌記事索引データベース」や日外WEBサービスの雑誌記事検索(千葉大図書館ではいま、無料トライアルをやっている。学内で利用するのは無料!)を使うのが便利です。また外国語の雑誌論文を探す場合には、同じく学術情報センターの”Social SciSearch”や”A&H Search”(社会科学・人文科学分野の論文を網羅)といったデータベースを利用するのが良いでしょう。ただし、これらの学情のデータベースの利用は、有料で予め登録が必要なので学生には使いにくいかもしれません。学生はこのオンライン上で公開されているのと同内容のものを、『雑誌記事索引』という国会図書館が編集している雑誌で見ることができるので、そちらを利用するのが良いでしょう。

 

ステップ3 (大学院生向け)~

ワンランク上の洋雑誌論文の検索・注文の方法

 ここからは、大学院生を対象により高度な論文検索の手法を紹介します。  洋雑誌の論文を検索する際に、最も便利なのは”Uncover”というデータベースで、およそ2万タイトルの雑誌を収録しており、1980年代後半以降の論文・記事をデータベース化しています。キーワードでの論文検索や雑誌を指定して目次を見ることもできます。また、検索した論文を24時間以内に直接FAXで送付してくれるサービスも行っています。著作権料など含めて論文一本約2000円ほどになりますが、日本で入手不可の雑誌の場合には、利用する価値があるでしょう。  

 また、同じく”Uncover Reveal”では、年額20ドルで、雑誌論文の目次50タイトルと論文の検索データ(25キーワード・著者名の検索結果)を一年間電子メールで毎週送付してくれるサービスがあります。例えば筆者の場合ですと、「アメリカ史・国際関係史・人種・エスニシティ研究・アジア系アメリカ人研究」などの分野のあらかじめ登録してある50の新刊雑誌が刊行されるとすぐに電子メールでその目次が送られてきます。勿論、その論文FAXで取り寄せることも可能です。そのうえ、”Asian American, Chinese American, San Francisco, Civil War, Reconstruction, Patriotism, Ronald Takaki, John Bodnar…”などのキーワードや著者名を登録してあるので、Uncoverに登録されている約2万近い学術雑誌すべての中から、それに当てはまる論文すべてを電子メールで毎週教えてくれます。キーワードの登録によっては、関係のない論文の情報まで送られてきてしまうので注意が必要ですが、その分野の最先端で何が問題にされているのかを把握するにはとても便利なサービスだと思います。このようにして収集した文献リストを自分で整理して、管理すればいいわけです。

 今ひとつの方法は、メーリングリストを使った情報収集です。日本の研究者の間でも、ようやく学会・研究会ごとに研究の促進、情報交換のためのメーリングリストが作られるようになりました。メーリングリストでは、複数のメンバーによって共有されたメール・アドレスにメールを送信することで、それがメンバー全員に送信されます。それゆえ、その専門分野の研究者のみが知りうる情報を入手するためには、このメーリングリストを利用することがたいへん有効な手段となるわけです。筆者のような外国研究の場合には、海外の研究者ネットワークのメーリングリストに直接参加して、ネット上で情報交換したり、ときに喧嘩をしたりすることもできます。院生諸君も、語学力が向上する効果もあるので、トライしてみて下さい。海外の研究者が、あなたのために史料の所在情報をメールで送ってきてくれるのです。まずは、手始めに下記のものから試してみると良いでしょう。